南スーダン 自衛隊撤収

政府は3月10日夕方、国家安全保障会議(NSC)を首相官邸で開催し、南スーダンPKOに派兵している陸上自衛隊を2017年5月末に撤収させることを決定しました。
 昨年7月、自衛隊が活動する首都ジュバで、大統領派・副大統領派の大規模な戦闘が発生し、270人以上が死亡しています。南スーダン政府軍による国連PKOへの攻撃も相次ぎ、7月の戦闘では国連施設にも迫撃砲などが撃ち込まれ、PKO要因2名が死亡しました。その後も対立は収まらない状況で、PKO5原則は完全に破たんしていました。
 このようなもとで安倍政権は自衛隊に、「任務遂行」のために敵対勢力への攻撃が可能となる「駆け付け警護」の任務を付与したことから、憲法で明確に禁じている「海外での武力行使」につながる危険が広がっていました。
 自衛隊が現地の状況を上級司令部に報告するための日報にも「戦闘」と表現していました。しかし、政府はその日報を「破棄した」と隠ぺいし、その上で「戦闘は発生していない」「PKO5原則は維持されている」と虚偽説明を国会で繰り返してきました。
 政府関係者はPKO5原則の破たんを否定していますが、撤収を決断した背景には、国会での政府答弁が破たんしたことがあることは間違いありません。

撤収を検討し始めた時期について、10日夜、稲田朋美防衛相は記者団に対して「昨年9月ごろから検討していた」と述べました。

 9月から撤収を検討しながら、11月に「駆け付け警護」などの新任務を付与したことは、安保法制(戦争法)の発動という実績をつくることだけが目的だったのではなでしょうか。

戦闘状態にあったジュバ 陸上自衛隊 「日報」

安倍首相の会見では

先ほど国家安全保障会議を開催し、南スーダンに派遣中の自衛隊施設部隊は、現在従事している道路整備が終わる5月めどにその活動を終了することを決定した。
 南スーダンPKOへの自衛隊部隊の派遣は今年1月に5年を迎え、自衛隊の施設部隊の派遣としては過去最長となる。その間、首都ジュバと各地を結ぶ幹線道路の整備など、独立間もない南スーダンの国づくり」に大きな貢献をしてきた。南スーダンの国づくりが新たな段階を迎えるなか、自衛隊が担当しているジュバにおける施設整備が一定の区切りをつけることができると判断した。

撤退理由の部分を抜粋


南スーダンPKO 「殺し殺される」危険が現実に

 2016年11月15日、政府は南スーダンのPKO(国連平和維持活動)に関し、今年3月に施行された安保法制(戦争法)に基づく自衛隊の新しい任務として「駆け付け警護」を盛り込んだ実施計画の変更を閣議決定しました。
 これをうけて11月18日、稲田朋美防衛省は南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣する陸上自衛隊の次期部隊に「駆け付け警護」などの新任務付与を命令しました。

 陸上自衛隊第9師団第5普通課連隊(青森市)等、次期派遣部隊(第11次隊 要員約350人)は11月20日から順次現地に送られます。第10次隊と交代する12月12日から新たな任務が実施可能となります。
 政府は「駆け付け警護」について

①自衛隊から離れた場所で襲撃を受けている国連職員やNGO(非政府組織)関係者などの要請を受けた場合、武器をもって救出に向かう。

②他国軍の警護は想定されない。

と説明。自衛隊の宿営基地を他国部隊と連携して守る「共同防護」の任務も付与されます。


任務を遂行するためには政府軍との交戦が避けられない

 現状の南スーダンは、政府軍がPKOに対する直接的な攻撃者になっています。自衛隊が新任務を実行すれば、政府軍との交戦も想定され、憲法が禁じる「海外での武力行使」につながります。


11月世論調査(時事通信)では47.4%が「反対」

世論調査

 時事通信が11月10~13日に行った11月世論調査では、南スーダンのPKOに派遣する自衛隊に「駆け付け警護」の新任務を付与することに「反対」が47.7%となり、「賛成」の28.2%を大きく上回りました。
 現地の戦闘状態が明らかになる中で、自衛隊員が「殺し殺される」戦闘に巻き込まれる危険性に、国民の不安は高まっています。


政府 「PKO5原則は維持されている」と強弁

政府が15日に公表した 南スーダンPKO(国連平和維持活動)の「新任務付与に関する基本的な考え方」(全文)


1 南スーダンにおける治安の維持については、原則として南スーダン警察と南スーダン政府軍が責任を有しており、これをUNMISS(国連南スーダン共和国ミツション)の部隊が補完しているが、これは専らUNMISSの歩兵部隊が担うものである。
2 わが国が派遣しているのは、自衛隊の施設部隊であり、治安維持は任務ではない。
●駆け付け警護
3 「駆け付け警護」ついては、自衛隊の施設部隊の近傍でNGO等の活動関係者が襲われ、他に連やかに対応できる国連部隊が存在しないといった極めて限定的な場面で、緊急の要請を受け、その人道性及び緊急性に鑑み、応急的かつ一時的な措置としてその能力の範囲内で行うものである。
4 南スーダンには、現在も、ジュバ市内を中心に少数ながら邦人が滞在しており、邦人に不測め事態が生じる可能性は皆無ではない。
5 過去には、自衛隊が、東ティモールやザイール(当時。現在のコンゴ民主共和国)に派遣されていた時にも、不測の事態に直面した邦人から保護を要請されたことがあった。
その際、自衛隊はそのための十分な訓練を受けておらず、法律上の任務や権限が限定されていた中でも、現場に駆け付け、邦人

を安全な場所まで輸送するなど、邦人の保護のため、全力を尽くしてきた。
6 実際の現場においては、自衛隊が近くにいて、助ける能力があるにもかかわらず、何もしない、というわけにはいかない。
しかし、これまでは法制度がないため、そのしわ寄せは、結果として、結果として現場の自衛隊員に押し付けられてきた。本来、あってはならないことである。
7 「駆け付け警護」はリスクを伴う任務である。しかし、万が一にも、邦人に不測の事態があり得る以上、
①「駆け付け警護」という、しっかりとした任務と必要な権限をきちんと付与し
②事前に十分な訓練を行った上で、しっかりと体制を整えた方が、邦人の安全に資するだけではなく、自衛隊のリスクの低減に資する面もあると考えている。
8 自衛隊は自己防護のための能力を有するだけであり、あくまでもその能力の範囲で、可能な対応を行うものである。
他国の軍人は通常自己防護のための能力を有しているが、それでも対応困難な危機に陥った場合、その保護のために出動するのは、基本的には南スーダン政府軍とUNMISSの歩兵部隊であり、そもそも治安維持に必要な能力を有していない施設部隊である自衛隊が、他国の軍人を「駆け付け警護」することは想定されないものと考えている。




9 これまでの活動実績を踏まえ、第11次隊から南スーダンにおける活動地域を「ジュバ及びその周辺地域」に限定する。
このため、「駆け付け警護」の実施も、この活動地域内におのずと限定される。
●宿営地共同防護
10 国連PKO等の現廟では、複数の国の要員が協力して活動を行うことが通常となっており、南スーダンにおいても、一つの宿営地を、自衛隊の部隊の他、ルワンダ等、いくつかの部隊が活動拠点としている。
11 このような宿営地に武装集団による襲撃があり、他国の要因が危機に瀕(ひん)している場合でも、これまでは、自衛隊が共同して対応することができず、平素の訓練にも参加できなかった。
12 しかし、同じ宿営地にいる以上、他国の要因がたおれてしまえば、自衛隊員が襲撃される恐れがある。他国の要因と自衛隊員は、いわば運命共同体であり、共同して対処した方が、その安全を高めることができる。
13 また、平素から共同して訓練を行うことが可能になるため、緊急の場合の他国との意思疎通や協力も円滑になり、宿営地全体としての安全性を高めることにつながると考えられる。
14 このように、宿営地の共同防護は、厳しい治安情勢のもとで、自己の安全を高めるためのものである。これにより、自衛隊はより円滑かつ安全に活動を実施することができるようになり、自衛隊に対するリスクの低減に資するものと考えている。

●武力紛争
15 南スーダンにおいては、武力衝突や一般市民の殺傷行為がたびたび生じている。
自衛隊が展開している首都ジュバについては、7月に大規模な衝突が発生し今後の状況は楽観できず、引き続き注視する必要があるが、現往は比較的落ち着いている。
政府としても、邦人に対して、首都ジュバを含め、南スーダン全土に「退避勧告」を出している。これは、最も厳しいレベル4の措置であり、治安情勢が厳しいことは十分認識している。
こうした厳しい状況においても、南スーダンには、世界のあらゆる地域から、60ヵ国以上が部隊等を派遺している、現時点で、現地の治安情勢を理由として部隊の撤収を検討している国があるとは承知していない。
16 その上で、自衛隊を派遣し、活勣を継続するに当たっては、大きく、二つの判断要素がある、
①まずは、要員の安全を確保した上で、意義のある活動を行えるか、という実態面の判断であり、
②もう一つは、PKO参加5原則を満たしているか、という法的な判断である。
この二つは、分けて考える必要があり、「武力紛争」が発生しているか否かは、このうち後者の法的な判断である。
17 自衛隊の派遣は、大きな意義のあるものであり、現在も、厳しい情勢のもとではあるが、専門的な教育訓練を受けたプロとして、安全を確保しながら、道路整備や難民向けの施設構築を行うなど、意義のある活動を行っている。
棄権の伴う活動ではあるが、自衛隊にしか




できない責務を、しっかりと果たすことができている。
18 このような自衛隊派遣は、南スーダン政府から高い評価を受けている。例えば、キール大統領及び政府内で反主流派を代表するタバン・デン第一大統領からも自衛隊のこれまでの貢献に対して謝意が示されている。また、国連をはじめ、国際社会からも高い評価を受けている。
19 しかしながら、政府としては、PKO参加5原則が満たされている場合であっても、安全を確保しつつ有意義な活動を実施することが困難と認められる場合には、自衛隊の部隊を撤収することとしており、この旨実施計画にも明記している。
20 PKO参加5原則に関する判断は、憲法に合致した活動であることを担保するものであり、そのような意味で「法的な判断」である。
21 具体的には、憲法第9条が、武力の行使などを「国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と定めているように、憲法との関係では、国家まだは国家に準ずる組織の間で、武力を用いた争いが生じているか、という点を検討し判断することとなる。
22 仮にそのような争いが生じているとすれば、それはPKO法上の「武力紛争」が発生している、ということになる。
23 政府としては、従来から、PKO法上の「武力紛争」に該当するか否かについては、事案の態様、当事者及びその意思等を総合的に勘案して個別具体的に判断する。こととしている。
24 これを南スーダンに当てはめた場合、当事者については、反主流派のうち、「マシャール派」が武力紛争の当事者(紛争当事

者)であるか否か、が判断材料となるが、少なくとも、
○同派は系統だった組織性を有しているとは言えないこと、
○同派により「支配が確立されるに至った領域」があるとは言えないこと、また、
○南スーダン政府と反主流は双方とも、事案の平和的解決を求める意思を示していること
等を総合的に勘案すると、UNMISSの活動地域においてPKO法における「武力闘争」は発生しておらず、マシャールはが武力闘争の当事者(紛争当事者)に当たるとも考えていない。
25 南スーダンの治安状況は極めて悪く、多くの市民が殺傷される事態がたびたび生じているが、武力紛争の当事者(紛争当事者)となり得る「国家に準ずる組織」存在しておらず、PKO法上の「武力紛争」が発生したとは考えていない。



直前のページにもどる