脅威論に対して

中国・北朝鮮の脅威?

 国会、テレビ討論等で、中国の脅威、北朝鮮の脅威を示し、戦争法制(安保法制)の必要性を説きました。このこと事態、名指しされた国との関係でいかがなものかと思います。
 10月11日、防衛省は横浜で現役の日米制服組幹部らを招いて、戦争法案成立後の海上自衛隊の役割拡大についてシンポジウムを開きました。
 海上自衛隊護衛艦隊の山村浩司令官は、中国などを大頭にふれ、日米同盟強化の姿勢を示しましたが、米海軍第7艦隊のジョセフ・アーコイン司令官は「日米同盟の敵は中国か」の問いにたいし「われわれは中国を主たる脅威とはよばない」と答えています。

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 図は、日本の貿易相手を示した国です。中国は貿易国として第1位であり、お互いの依存関係が深まっている国です。また、日本の貿易における運搬手段は99.7%が海上による船で、残りが飛行機です。
何によって軍事衝突が起きるのかはわかりませんが、ひとたび衝突がおこり貿易がストップしてしまったら、お互いに多大な不利益が発生します。アメリカと中国だって同じです。
 
「問題」というのは、ASEAN(東南アジア諸国連合)やDOC(南シナ海行動宣言)、6カ国会議など外交の努力でしか解決する道はないのであり、21世紀の世界は各国がその様なスタンスに立っています。
用語集


南シナ海の領有権問題は当事者国(ASEAN加盟国)の努力で

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 南シナ海の領有権問題は、ASEAN加盟国のベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイの4カ国と中国が直接の当事者です。しかし、アメリカの「航行の自由作戦」としてミサイル駆逐艦の派遣や爆撃機を飛行させ、その行動に日本、フィリピンが賛成し対立が拡大する懸念が広がっています。
 中国の行動を問題としながらも、地域での緊張激化を避けたいのがASEAN各国の立場です。2015.11 ASEAN首脳会議の議長声明は、「すべての関係国が緊張を激化させる行為を自制する」よう訴えました。インドネシア大統領は、オバマ氏と李氏に直接、緊張を激化させないよう呼びかけました。
 2015/11/22閉幕したASEAN首脳会議では、「ASEAN共同体」を12月31日に設立すると宣言し、31日、「平和の中心的役割をめざす」とASEAN共同体がスタートしました。平和と安全、安定を目指すASEAN憲章の精神をふまえ、戦争放棄を明確にした東南アジア友好協力条約(TAC)を堅持したものとしています。このように外交の努力で解決していくのが21世紀のスタンスです。
 2015年11月14日、フィリピンが国連海洋法条約に基づいて起こした仲裁手続きが、オランダ・ハーグの仲裁裁判所で口頭弁論がおこなわれました。同仲裁裁判所は2016年中に国連海洋条約に基づく判断を出す予定となっています。
 日本はアメリカとともにこの海域に自衛隊を派遣することも検討しているようですが、このような行為は当事国から受け入れられるものではないでしょう。
「アメリカの起こす戦争に巻き込まれる」という戦争法の危惧は、このような形でもあらわれていると思います。


北朝鮮の問題は6ヵ国協議で


「誰もが認識しているのは、朝鮮半島でのあからさまな衝突にはすすみたくないということだ」アメリカ国務長官 カービー報道官は2016年1月7日の記者会見でこう述べました。また、ホワイトハウス アーネスト報道官は6日の記者会見で『軍事的選択肢もあるのか』の問いに、「われわれが現時点で望むのは、北朝鮮がミサイルや核実験をやめ、非核化を誓約することだ」と述べています。ともに、2016年1月6日に北朝鮮が4回目の核実験をおこなったことに対する発言です。

 アメリカは1994年に北朝鮮の核開発をめぐり、北朝鮮の核施設への空爆を検討したことがあります。しかし、朝鮮半島は、人口、産業が集中する地域であり、ひとたび戦争になれば、半島全体で壊滅的な被害が出るだけでなく、近隣諸国にそれが及ぶことが確実です。
 空爆と戦争の危機は、韓国の金泳三大統領の猛反対と、カーター元来大統領の訪朝により、瀬戸際で回避されました。米国はその後、99年に対北朝鮮政策の見直し(「ぺリー報告」)を行い、北朝鮮の核、ミサイル開発を、外交交渉という人的、軍事的被害を伴わない方法で解決することを優先する立場を打ち出しました。それが2003年からの6力国協議の開始にもつながっています。
 この間、米政権は民主、共和と交替してきましたが、北朝鮮問題については、軍事的解決ではなく、外交的解決で臨むという点では一貫しているのです。

2016.1.6におこなわれた北朝鮮の核実験をうけ日本では一部に、国民の不安と怒りに便乗し、「やはり安保法制=戦争法)は必要」だとする声があります。しかし、北朝鮮問題は、非軍事的に対応し解決することが国際社会の最大の関心事です。戦争法(安保法制)の出る幕はありません。
 「軍事に対して軍事で対応する」、これが戦争法です。北朝鮮の核実験で日本が軍事で対応するという選択肢は、国際社会の現状からみても考えられません。
逆にその行為は、国際社会から危険とみなされ、日本を孤立化させることになるでしょう。


*抑止力論

画像の説明

 政府のしきりに言っていました、脅威に対する抑止だと。
軍事力の増強を抑止と考えたとき、相手はどう考えるのでしょう? 相手より上にならないと「抑止」が効かないということになれば、軍事費はどこまで増えるのでしょう?  際限のない軍拡競争になるし、現になっています。
 とめどない軍拡競争は「一発接触」の緊張が高まるばかりです。

 盧溝橋事件で日中戦争が拡大した1937年(昭和12年)から終戦まで軍事費は国家予算の7割台から9割近くにまで拡大していました。その財源は、租税の重課だけではまかないきれず、ほとんど全部が各種公債に求められました。公債は年を追って累積し、それによって、インフレーションがすすみ、国民生活を圧迫しました。
昭和財政史IV・臨時軍事費 宇佐美誠次郎

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 2016年度政府予算案での防衛費は、15年度より740億円増やし5兆541億円となりました。この額は過去最高の額であり、第二次安倍政権発足以来、4年連続で軍事費が増額しています。



*アメリカの戦争に巻き込まれることはない?
 ベトナム戦争やアフガニスタン戦争、そしてイラク戦争のとき、日本にある米軍基地からアメリカ軍は出撃しました。 日本独自の造語で「後方支援」は、国際的には「兵站」(へいたん:ロジスティクス)となり、ジュネーブ条約では、「兵站」も軍事攻撃の目標になるとみなしています。
 すでに、まきこまれた状態です。「反撃」がなかっただけです。ですから、「アメリカの戦争に巻き込まれることはない」などというのは大ウソです。


*「戦争法」というのは悪質なレッテル張り?

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「安全保障法制」 → 「平和安全法制整備法」「国際平和支援法」
看板は「平和安全法制整備法」でも、法律の内容は憲法9条に反し、日本を「海外で戦争する国」につくりかえる法律です。
 先の大戦では「東洋平和」として侵略戦争を正当化し、「世界永遠の平和」として中国を侵略しました。
(文部省 『臣民の道』1941年 写真)

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「平和」「安全」「国際貢献」「国際協力」などの言葉がちりばめられていますが、「後方支援」も含めて「霞ヶ関文学」と称する人もいます。
安倍首相や与党のほうこそ、ごまかしのレッテルはりです。


戦争でテロはなくせない!

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 どんな理由であれ、無差別に罪のない人々を殺すテロは許されることではありません。
9.11 アメリカでの同時多発テロが起き、小泉首相(当時)は「破棄させるために武力行使はやむをえない」と支持を表明。「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」(地上部隊を送れ)とアメリカにせまられ、「非戦闘地域」に自衛隊を派兵しました。
 あれから14年がたちました。テロリストはいなくなったでしょうか? 「戦争ではテロはなくせない」というのがこの14年間の教訓ではないでしょうか。世界は気がついています。なぜこのような状況になったのかを。
 イラク戦争の当事者であるブレア元首相は「イラク戦争がISの台頭につながった」(10/28 米CNN)と認めています。空爆の強化は混乱に拍車をかけるものです。
 日本はすでにアメリカ主導の「対IS有志連合」に名を連ねており、ISは日本を攻撃対象として名指ししています。
「戦争法」では、アメリカに空爆支援を要請されたら「法律が無い」と断る理由がありません。断るどころか安倍政権は名乗りでるのではないでしょうか。 戦争法(安保法制)が「国民を守る」などというのは状況からしてもありえません。


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